沼津本通防火建築帯見学会-沼津アーケード名店街-(沼津市)
2024.9.28
暮らし
日本一の富士山を眺めながら、休日を大きく楽しむ!
静岡県東部を中心とした新(深)情報サイト「ふじスマ+(プラス)」のライター、スマコです。
看板のレタリングのフォントを見つけながら、まち歩きを楽しむのが最近のマイブーム。
静岡県東部を中心に、商店街散策に出掛ける今日この頃です。
JR沼津駅南側に位置する商店街のひとつ「沼津アーケード名店街」。
看板デザインはもちろんのこと、歴史を積み重ねてきた商店街の建物が味わい深くかっこいいのです。
そんな「沼津アーケード名店街」が、大きな過渡期を迎えようとしています。
沼津アーケード名店街といえば
1954年(昭和29年)に完成した現在の建物、建設から70年以上が経ちました。
商店が連なる「横のデパート」としてまちに賑わいを創出してきた「沼津アーケード名店街」では、月に一度、「ついたち市」を開催。なんと1975年(昭和50年)から半世紀近く続けられています。
出店者情報や当日の様子など、沼津アーケード名店街のfacebookページでお知らせしています。
解体前最後の見学会
沿道に面して、隙間なく建てられた地上3階建て以上の鉄筋コンクリート造の共同建築ビルを「防火建築帯」と言います。
1952年(昭和27年)に施工された「耐火建築促進法」のもと、まちの防火を目的に「沼津アーケード名店街」は、全国的にも先駆的な事例となりました。
上写真の白い壁部分に注目してください。
このカーブした壁が「沼津本通防火建築帯(沼津アーケード名店街)」の特徴のひとつで、建設当時の最先端のデザインなんだとか。
建設から年月が経ち、建物の老朽化や後継者問題など、商店街を取り巻く環境の変化と課題により、2006年から再開発が検討されてきました。建物の老朽化が深刻化し、「再び人が集まれる場所に」と、再開発が進められることとなりました。
先行して行われる一部エリアの解体に向け、2024年春から引っ越しが始まり、10月から解体工事が始まります。2024年8月末、所有者の方のご厚意により、解体を前に居住部分の建物見学会が開催されました。
沼津の戦後復興の象徴
第二次世界大戦時には、軍需工場があったため、空襲により大きな被害を受けた沼津市。
沼津駅から千本浜(海)が一望できてしまう程の焼け野原になってしまったといいます。
そんな市街地に、戦災復興のさなか建設された「沼津アーケード名店街」は、沼津の戦後復興の象徴でもあるのです。
2024年8月26日(月)、27日(火)の2日間、『二度と出会えないこんな建物 解体前の最後の2日』と銘打って行われた見学会。建物との別れを惜しみながら、大勢の市民が見学会に足を運びました。
2階以上は一体どうなっているの?
1階が店舗、2階以上が住宅であり、2階部分が歩道にせり出しているのが特徴です。
せり出した部分が屋根代わりになり、「沼津アーケード名店街」では、雨の日でも快適にお買い物をすることができるんですよね。
1階の店舗部分にはお邪魔したことがあるけれど、2階以上はどんな造りになっているのでしょう。
道路に面しているファサードには馴染みがありますが、居住部分である2階以上に入ったことがある人は、きっとほんのわずかなはず。
見学会に参加されていた、ご近所にお住いの方に感想をお聞きしました。
「お買い物でお店には何回もお邪魔したことがあるけど、2階以上に上がらせてもらったのは初めてです。こんなふうになっていたんですね」
建物見学に出発!
解体を機に、お店を移転される方、店仕舞いをされた方と、大きな決断をされた商店の方々。
看板は残っているものの、建物内にはほとんど物は残っていません。
新しいまちづくりに向けた大きな一歩と理解しつつも、ついこの間までご商売をされていた場所、がらんとした光景に寂しさを感じてしまったスマコでした。
商店街での暮らし
物がない店内でも、じっくり見学していると、そこでの暮らしを感じ取ることのできる、住んでいた人たちの”思い出のかけら”に出会うことができました。
約70年間、商店街で暮らす人の営みを垣間見ることができました。
昭和が色濃く残る建物
居住部分の撮影について、SNS等での公開は控えてくださいとのことでしたが、個人で見返す記録としての撮影は許可出ていました。
2階は経営者家族、3階は従業員が住むスペースという使い方をしていたというお話も。
建物によって和風であったり、増築していたりと、全く異なる内装だったことがとても興味深かったです。
タイル製の洗面台やレトロなデザインのスイッチなど、昭和が色濃く残る内装に、懐かしさを感じました。見学されている人たちからも「懐かし~!」の声が。
駄菓子屋「だいこくや」さんの店舗奥のスペースには、現在は使われていませんが、「手押し井戸ポンプ」が残っていました。
いざ屋上へ!
階段を上がり、いよいよ屋上!
共同建築様式の商店街の屋上は一体どうなっているのでしょうか。
屋上で繋がる建物
境目はあるものの、屋上がすべて繋がっています。
暮らしぶりがわかる、洗濯物の干し場。
かつては、住んでいる子どもたちの遊び場になっていたそうです。
初めて見る景色
隣り同士の境に、フェンスなど特に設けていないことにビックリしたスマコ。
それぐらい家族ぐるみのお付き合いが当たり前であって、商店街の横の繋がり強かったんですね。
「沼津アーケード名店街」を初めて上から眺め、これまで見たことのない景色に気持ちが昂りました。
お天気が良ければ、富士山も見える屋上、気持ちの良い景色が広がっていました。
これから始まる”新しいまちづくり”
戦後、現在の都市開発の原型となった「沼津アーケード名店街」。
これから”新しいまちづくり”が本格的に始まります。
2029年3月完成に向け、地下2階(駐車場)、1階は店舗、2階以上は住宅の地上10階建てのビルが建設予定です。これからの動向が気になる方は、「再開発ニュース」として最新情報を発信している「町方町(まちかたまち)・通横町(とおりよこちょう)第一地区市街地再開発組合」さんのホームページをご覧ください。
商店街のシンボルになっているアーチも、今後、撤去が決まっているようです。(上写真)
厳しい暑さが和らいできた9月下旬、10月の解体工事を前に、改めてまちなみを心に焼きつけながら、「沼津アーケード商店街」でお買い物を楽しんでみては。
スポット情報 – 沼津アーケード名店街
所在地:静岡県沼津市町方町
【町方町・通横町第一地区市街地再開発組合】ホームページ
2024年8月に取材しました