目指すは地域に根差した音楽祭。三島せせらぎ音楽祭2025(三島市)
2025.3.13
アート&カルチャー
日本一の富士山を眺めながら、休日を大きく楽しむ!
静岡県東部を中心とした新(深)情報サイト「ふじスマ+(プラス)」のライター、スマコです。
制限の多かったコロナ禍、三島市では心と心を紡いだ音楽会をきっかけに、新たな交流とカルチャーが生まれました。音楽会は音楽祭へと前進、”地元に根付いた音楽祭”を目指し、活動を続ける「三島せせらぎ音楽祭」をご紹介します。

2025年2月に開催された、第4回目となる「三島せせらぎ音楽祭」
2025年2月9日(日)に「三島市民文化会館」を会場に開催された「せせらぎコンサート」。同コンサートは、4日間開催された「三島せせらぎ音楽祭」の最終日に行われました。
国内外で活躍する音楽家が奏でるハイクラスの音楽が、学校やまちなかの商業施設など、三島のまちなかで奏でられる4日間。
大変貴重で特別な4日間ですが、活動に賛同する音楽家たちが目指すところは、イベントとしての音楽祭ではありません。
そこには、「三島せせらぎ音楽祭」が始まるきっかけになった音楽家の皆さんの思いがありました。

せせらぎ音楽祭とは
コロナ禍、集団感染を防ぐためコンサート公演の中止が相次ぎ、音楽活動をストップせざるを得なかった音楽家たちを受け入れたのが三島市でした。
2020年8月、感染症対策をとりながら、音楽家の支援として「こころの音楽会」を三島市内で開催。
ボディーパーカッションの体験を取り入れつつ、子どもたちへ音楽を届けました。
-三島で恩返しの演奏会を開きたい-
矢部達哉さん(ヴァイオリン奏者)の呼びかけに賛同した音楽家たちが集い、2022年1月に第1回目となる音楽祭を開催しました。第4回目が2025年2月に開催され、音楽祭は継続されています。
“三島市民に良い音楽を届けたい”活動の根底に、この思いがあります。

子どもたちに音楽を届ける「学校等訪問コンサート」
2025年の「三島せせらぎ音楽祭」でも、2月6日(木)、7日(金)の2日間、三島市内の小学校の他、静岡県立こども病院を訪れ、子どもたちの目の前で演奏を披露しました。
その他に、音楽を学ぶ子どもたちや学生に技術指導を行う「三島せせらぎクリニック」を開催。
活動の中で、音楽家の皆さんが一番大切にしているのが、これらアウトリーチ活動。音楽祭の期間以外にも三島を訪れ、訪問コンサートを実施しています。
「病院、学校、自分たちのキャリアの一番良いところをそこに届けたいです」(矢部さん)
小さい頃から上質な音に触れる機会を作ることで、三島の音楽文化を育む、未来への種まきをしているのです。

せせらぎ音楽祭初の試み「公開リハーサル」の実施
2025年2月7日(金)夜、「三島市民文化会館」の小ホールを会場に、三島せせらぎ音楽祭初の試みとなる「公開リハーサル」が行われました。
演奏を作り上げる過程が観られる貴重な機会ということもあり、県外からも来場がありました。
ドヴォルザーク「弦楽セレナーデ」の第4楽章の音合わせをする様子を公開。
コンパクトな会場なので、指揮者の下野竜也さんと弦楽奏者の皆さんとのやりとりが直接聞こえます。
公開リハーサルを見学するまで、指揮者をメインに演奏を作り上げるイメージを持っていました。しかし、実際にはイメージを共有したり提案したりと、全員で表現を作り上げているのだと知ることができました。
30分間の公開リハーサルの後は、下野竜也さんと矢部達也さんのトークセッション。
ユーモアを交えながら来場者を楽しませてくれました。
「公開リハーサルの企画として”指揮者vsオーケストラ”としましたが、いつも戦っているわけではないんですよ。100人ほどのオーケストラを指揮する時には決断力が必要ですが、顔が見える規模のオーケストラでは”自分たちのこうしたいな”を、みんなで作っていきます。相談という言葉を使いましたが、音楽の捉え方を共有することで可能性を知りたいと考えています」(下野さん)
なんと最後に質疑応答の時間も!
”演奏している時に、どれくらい指揮者を見ているんですか?”など、興味深い質問も。
「演奏をもっと聴きたかったら、2月9日のせせらぎコンサートに来てください」と、約1時間の公開リハーサルは締め括られ、訪れた人たちは音楽祭後半のプログラムにさらに期待が高まった様子でした。

三島せせらぎ音楽祭3日目「まちかどコンサートin日清プラザ」
三島市中田町の「日清プラザ」1階レストスペースが、「まちかどコンサート」の会場です。
世界で活躍する音楽家の演奏を間近で鑑賞できるまたとない機会。
立ち見が出るほど会場はお客さんで溢れていました。
「音をたくさん浴びて帰ってください」と、下野さんの挨拶からスタートしたコンサート。
「アイネクライネナハトムジーク」、「花のワルツ」のような多くの人が耳にしたことのある曲に、「2つのヴァイオリンのための協奏曲」など、翌日の「せせらぎコンサート」のプログラムからも。
ピアニストの横山幸雄さんは、まちかどコンサート仕様ということで電子ピアノでショパンの「英雄ポロネーズ」など三島スペシャルを披露。
「三島の方だけですよ。ピアニストを正面から観られるのは」と、下野さん。
そうなんです!とにかく特別がいっぱい詰まった三島せせらぎ音楽祭。
年々、ファンを増やしている魅力がよくわかります。

三島の隅々まで音楽を届けたい
メンバーひとりひとりが主役になる選曲で、たっぷり1時間!
本当に入場無料?!と、疑ってしまうくらい充実した内容で、観客の皆さんも最初から最後までじっくりと楽しまれていました。
「ラデツキー行進曲」では、観客から手拍子が起こり、会場が一体となり迎えたフィナーレ。「三島せせらぎ音楽祭」のテーマである、”音楽でつながる、未来へつながる”を体感した瞬間でした。
「三島市の隅々まで音楽を届けたい」と、音楽家たちが三島市内へと出かけていくのが「三島せせらぎ音楽祭」のスタイル。
「この音楽祭は、まだ始まったばかり。これから市民との交流が増えていくと思います。僕たちを身近に感じてください。皆さんの輪の中に入っていきたいと思っています」(矢部さん)

三嶋大社でせせらぎ音楽祭の成功を祈願
「まちかどコンサート」終演後、「三嶋大社」で「三島せせらぎ音楽祭」の成功を祈願しました。
御本殿を参拝後、三嶋大社で初となる奉納演奏が舞殿で執り行われました。

三嶋大社初となる舞殿での奉納演奏
多くの参拝者が見守る中、3曲を演奏。
■J.S.バッハ「主よ、人の望みの喜びよ」
■チャイコフスキー「花のワルツ」
■エバン・コール「鎌倉殿の13人メインテーマ」
三島の地に縁のある、源頼朝が源氏再興を祈願した「三嶋大社」。
そして、「三島せせらぎ音楽祭」で指揮を振る下野竜也さんは、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の指揮者でもあります。荘厳さ、華やかさを併せ持つ選曲に感激でした!

三島せせらぎ音楽祭最終日「せせらぎコンサート」
2月9日(日)の最終日に行われた「せせらぎコンサート」。
第1部「ふれあいステージ」、第2部「ザ・クラシックステージ」と、初めてクラシックコンサートを楽しまれる方から本格的に楽しみたい方、それぞれが満足できるプログラムでステージを構成。
第4回目を迎え、大勢のお客さんで会場の大ホールが埋まっている光景から、これまで種を蒔いてきた活動を通じて音楽祭が市民に浸透し始めていることが感じ取れました。
市民の方と手を携えて長く活動を続け、他の都市が羨むような音楽祭を目指したいと、音楽家の皆さんはずっと先を見据えています。

次回の三島せせらぎ音楽祭は、2026年4月開催
回を重ねるごとにファンを増やし、発展を続ける「三島せせらぎ音楽祭」。
気になる次回の開催は、2026年4月を予定しています。
「せせらぎコンサート」会場エントランスには、ファンからの演奏曲のリクエストが貼り出されていました。リクエストの中から来年のステージプログラムが組まれるかもと考えるとワクワクしますね!
音楽祭の期間中、三島市内のグルメやスポットなど観光を楽しまれるファンの姿も見られ、音楽祭を介して三島を好きになってくれる人が増えています。
これまでの音楽祭に触れ、「三島せせらぎ音楽祭」をもっと応援したい!
と、思った方、次回の音楽祭では活動ボランティアとして、さらに深く楽しんでみてはいかがでしょうか。
≫地域づくりに興味がある方(三島市在住でなくてもOK)
≫音楽が好き、音楽を勉強している方
≫夢中になれることを探している方 など
※但し、15歳以上
音楽祭当日の運営サポート、月1、2回開催される会議に参加しながら音楽祭を一から作り上げる実行委員会と、関わり方も選択できます。ボランティア募集を含む、次回の「三島せせらぎ音楽祭」の最新情報は専用SNSをチェックしてくださいね。
”三島にはこんな素敵な音楽祭があるんだよ”
三島せせらぎ音楽祭でしか味わえない感動と楽しさが生み出す特別な思いが、地域でいろいろな化学反応を起こしていきそうな予感。地域に愛される音楽祭のこれからが楽しみですね。
イベント情報 – 三島せせらぎ音楽祭
三島せせらぎ音楽祭公式サイト
専用SNSアカウント
Instagram:@mishima_musicfes
X(旧twitter):@mfseseragi
facebookページ:三島せせらぎ音楽祭
LINE:@159pgkjk
※2025年2月に取材しました
写真提供:三島せせらぎ音楽祭実行委員会