伊豆から繋がる!蝶番で繋がる!オープンな町工場「有限会社 伊藤金属総業」(伊豆市)
2025.5.9
レジャー
日本一の富士山を眺めながら、休日を大きく楽しむ!
静岡県東部を中心とした新(深)情報サイト「ふじスマ+(プラス)」のライター、スマコです。
連携エリア内の直売所を特集している「ふじスマプラス」。
それは、ものづくりに携わる人たちへリスペクトの気持ちとエールを送りたいからです。
“自社商品にもっと光を当てたい”
SNSを積極的に活用し、新たなチャレンジを通じて自社製品の可能性を広げる伊豆市の企業をご紹介します。

蝶番で繋がる先に何がある?!
改めて「蝶番」をじっくり眺めたり、まちなかで探してみたりしたことはありますか。
蝶番は、「ちょうばん」または「ちょうつがい」と読み、「丁番」と書くことも。
「番」には、繋ぎ目の部分という意味があり、開き戸や箱の蓋など、開閉できようにするための支点となる金物部品のことです。
蝶番の製造・販売を手掛ける会社が伊豆市柏久保に。金物部品としての価値だけでなく、伊豆修善寺の観光資源として自社商品の魅力を発信している会社が「有限会社 伊藤金属総業」です。

蝶番の沼にハマっている伊藤さん
出会いは、2025年3月に「プラサヴェルデ(沼津市)」で開催された「第2回ぬまりびと博覧会」。
SNSで取り組みを知り、気になる存在だった「(有)伊藤金属総業」さんに会いに行きました。
会場でひと際目立っていたのが、”蝶番沼”にハマっている「つなぎびと」こと伊藤さんのブース。
出店者の間でも、前回よりも深く沼にハマって進化を遂げたぬまりびととして話題に上がるほど、蝶番愛が溢れていました。
「伊藤金属総業」の蝶番の活用方法は、はっきり言って癖が強い!
だからこそ愛を感じ取ることができ、出会った人の見方が変わるはず。
■蝶番を知ってもらいたい
■蝶番を通じて出会った人に喜んでもらいたい
顔ハメパネル「つながる金(銀)の蝶番」は、蝶番の魅力を伝えるために自作したPRグッズ。(上写真)
1人でハマるも良し、家族とハマるも良し!
止まっている番の蝶々の形に似ていることから「蝶番」と呼ばれるようになった金具ですから、大切な人と手と手を合わせ、ハートの蝶番ポーズで記念撮影がオススメです。
蝶番を楽しむことができたら、これであなたも「Choutsu-Guy(チョウツガイ)」、「Choutsu-Girl(チョウツガール)」の仲間入り。
「ぬまりびと」とは、夢中になって物事を探究する、沼にはまった人たちのこと。様々なジャンルのマニアや研究者、専門家たちが集まり、活動を発表する場が「ぬまりびと博覧会」です。
いろいろなジャンルの”沼”を見て、そのおもしろさに触れ、気に入った”沼”には自らハマりにいこうという、多種多様な楽しみ方ができる文化イベントです。2026年3月には、第3回目となる博覧会を開催予定。

(有)伊藤金属総業 代表取締役 伊藤徹郎(てつお)さん、奥様のとも子さん
伊藤さんには大変申し訳ないけれど、これまでの人生で蝶番に注視したことがなかったスマコ。
『蝶番が持つポテンシャルってなんだろう』
ハマってしまう「蝶番」の魅力について、「つなぎびと」伊藤さんにお話を伺いました。
代表取締役の伊藤徹郎さんは、(有)伊藤金属総業の三代目。
代替わりをした2020年は、ちょうどコロナ禍。受注の減少、材料の値上がりなど会社の経営に影響が出ていました。三代目としてがんばりたいという気持ちとは裏腹に会社の状況は芳しくありませんでした。また、感染拡大防止のため、人と接する機会が激減。後ろ向きな気持ちになっていたと伊藤さんは振り返ります。
現状打破のために「気持ちを外に向けよう」と、奥様のとも子さんと話し合って意識改革をしました。
新型コロナウイルスの流行が落ち着いたタイミングで展示会に赴いたり、自ら出展したりと積極的に同業者、他業種と繋がるようになりました。「ぬまりびと博覧会」への参加もそのひとつ。自社製品の見せ方に工夫を凝らしたり、他の出展者の前向きな姿勢を見て背中を押してもらったりと、参加したことで得られたものは大きかったといいます。

蝶番屋しか作れない蝶番
1945年の創業以来、伊豆修善寺で蝶番を作り続けて80年の「伊藤金属総業」。
これまで積み重ねてきた経験と技術で、既成の製品にはない寸法や形状などに対応したオーダーメイドの特注仕様、数個の試作から数千個の量産なども請け負っています。
「人との繋がりを大切にし、常に正しい仕事をする」をモットーに、もともと別の物を繋ぐ役割を果たす「蝶番」を製造する会社らしく、”ヒト繋ぎ”・”モノ繋ぎ”を大切にしています。
■高校生以下の学生の見学
■職場体験
■学校へ出張し、製作体験の実施 など
自社を知ってもらう機会として、積極的に受け入れています。
また、工場と聞くと、社外への技術流出を防ぐためにクローズした場所というイメージがありますが、取引を検討するメーカーや業者だけでなく、一般の人を対象に工場見学と蝶番の組み立て体験を行っています。

蝶番の製造過程を知ろう!工場見学を受け入れています
ものづくりが好きな人、ゼミ旅行、研修旅行(視察)など、最少5名から工場見学を受け付けています。(最大20名)
素材から始まり、蝶番ができるまでの工程を順に見学、希望があれば併せて、「蝶番の組み立て体験」も。視覚や聴覚など、感覚をフル稼働しながらものづくりに触れることができるのが、実際に稼働している工場を見学する醍醐味でしょう。中には、創業当時から使用している機械も。工場見学と体験の所要時間は約1時間、楽しみながら企業を知ることができます。
「伊藤金属総業」では、2009年頃から工場見学を実施。既存の観光資源ではないものに着目した観光プランを立てる際、協力してもらえないかと知人から相談を受けたことがきっかけでした。それまでは関係者以外来客のなかった工場で何ができるかを考え、シンプルに「見せる」ことからスタート。それから約16年、「蝶番工場見学と蝶番作り体験」が、伊豆市の「ふるさと納税」の返礼品に登録されました。
伊藤さんご夫婦は、自社の魅力、存在感の引き出し方をさらに学ぼうと、市外並びに県外のオープンファクトリーなどに積極的に参加されています。

この丸みが伊藤金属総業のこだわり
蝶番の軸となる回転部分に施す「カール曲げ加工」。
カール曲げ加工の工程において、会社が所有するプレス機金型を使用することで、専用金型の製作が不要に。これでコストを削減することができ、会社の強みになっています。
さらに注目したいのは、カール部分の丸。
極限まで美しい丸に加工するのが、「伊藤金属総業」のこだわりです。
多少いびつであっても、2つの蝶番片を繋ぐ芯棒を通すことができれば蝶番としての機能を果たします。しかし、お客様の手に渡った後も不具合なく、気持ちよくお使いいただけるように、極限まで丸にこだわるのです。ノウハウがなければ成り立たないこのこだわりは、「伊藤金属総業」の仕事に対する誠実さと技術の高さの証です。

長年積み重ねられてきたノウハウを活かす
20の工程を経て、蝶番が完成します。見学して驚いたことは、オートメーションではなく手作業で製造されている点です。機械でも組み立てることはできますが、受注数によってはかえってコストが高くなってしまいます。製品の品質はもちろんのこと、多品種少量生産に対応できることが伊藤金属総業の強みなのです。
蝶番製造の仕上げともいえる組み立て作業スペースは、創業当時に建てられた木造建屋。天井を見上げると木の梁が見えるので、工場見学に行かれた際には、ぜひ建物にも注目してくださいね。
ここでは、2つの蝶番片(ヒンジピース)と芯棒(シャフト)を金槌(かなづち)で叩いて組み立てます。また、一角では皿穴加工の処理が行われていました。蝶番片にドリルで穴を開けるという、一見シンプルな作業ですが、この加工ができるスタッフは社内で数人だけ。ノウハウがなければ、削った箇所が凸凹になってしまいます。出来上がった製品の美しさは、高い技術力があるからこそなのです。

蝶番の組み立て体験-縁結びのお守り-
製造過程を見学した後は、ショールーム「TsunagaRoom(つながルーム)」で「組み立て体験」にチャレンジ!
見学した組み立て作業を実際にやってみます。金槌を使いますが、普段DIYをしない人でも安心してチャレンジできる内容です。
さて、ここで蝶番片をよく見てください。
四隅をハート型に繰り抜いた特別仕様の蝶番です。
人の繋がりを大切にする「伊藤金属総業」らしさと、参加された方が喜んでくれるものを作りたいという思いから誕生したのが縁結びのお守り。自分で組み立てた蝶番は、ストラップを取り付けてお土産に持ち帰ることができます。
【料金】1名2,000円(税込)
【所要時間】約60分
【人数】5名以上20名まで
【詳細】
≫駐車場あり
≫希望日の2週間前までに要予約
≫工場稼働時のみ、見学及び体験の受け入れ可能。工場休業日の実施については要相談(内容を変更して実施)
≫繁忙期等、受け入れ不可
≫ホームページから申込みください

蝶番の魅力を伝える新たなチャレンジ
展示会出展など外に発信する機会が増え、自社を知ってもらうきっかけとなるアイテムを作りたいという思いが芽生えます。
そんな時、授業の一環として、地元「静岡県立伊豆総合高等学校」総合学科3年生との商品開発のプロジェクトが始まりました。観光ビジネスの目線で、「伊藤金属総業」らしさを表現できるアイテムは何か意見を出し合いました。蝶番の形をしたクッキーや、蝶番をカプセルに入れたガチャガチャなど、高校生からは柔軟なアイデアが挙がりました。高校生のアイデアには多くのヒントがあり、実際のプロダクト誕生には至りませんでしたが、刺激を受けたといいます。
知人のデザイナーに相談し、約1年をかけて蝶番の魅力を伝える「CHOUTSUGAI MANIA-GOODS COLLECTION(蝶番マニアグッズコレクション)」が誕生。今年の「ぬまりびと博覧会」で初披露しました。
アイテムをきっかけに、展示会で声をかけてもらうことが増えたといいます。
また、地元で開催されたマルシェに出店した際には、地域の方とお話することができ、会社のことを知ってもらえる機会になったと実感したのだとか。
「社員さんは地元の方が中心です。マルシェにも社員さんのお知り合いが来てくれました。改めて意識しないと注目しない蝶番ですが、アイテムになったことで人の手に渡る様子も見られるので、社員さんの意識に変化が生まれるのでは。また、こうして会社について”知ってもらう”ことが、この会社なら安心して働けそうと雇用のきっかけにもなると期待しています。本業においても、技術があっても困っている人に届かなければ仕事にならないので、私たちにとって知ってもらうことは常に課題なんです」(伊藤さん)
「机の中から、無地の真っ白なシールが出てきたんです。マジックで少し書き足して自作の蝶番シールにして封筒を閉じるのに使っていました。CHOUTSUGAI MANIA-GOODS COLLECTIONのはじまりはそのシールで、こんなのがあったらいいなのイメージを膨らませていきました。“とめる”・”はさむ”の役割を果たす蝶番に共通した使い方ができるアイテムを作りたいと、ブラッシュアップを重ねました」(とも子さん)

蝶番で人が繋がる
ショールーム「TsunagaRoom」の一角で、「CHOUTSUGAI MANIA-GOODS COLLECTION」が展示販売されています。”蝶番にスポットライトを当てたい”・”会社のことを知ってほしい”、そんな思いが込められた蝶番がモチーフのプロダクト。「伊藤金属総業」で直売もしていますが、購入希望の方はお電話で連絡後にお出かけください。現在、ECサイトを準備中!また、直売以外でも購入できる取扱い店を順次拡大予定とのことなので、専用SNSで最新情報をチェックしてくださいね。
■蝶番シール
■クリアファイル
■メモパッド
■マスキングテープ(25mm)(15mm)の2種類
■キーホルダー
■ビッグTシャツ
■トートバッグ(静岡県立伊豆総合高等学校とのコラボグッズ) ※2025年5月上旬時点
■修善寺温泉 修善寺燕舎
■修善寺温泉 中清食堂 ※2025年5月上旬時点
「グッズ完成を記念して、社員さんに5種類詰合せにしてプレゼントしたんです。その中のひとつにクリアファイルがあります。展示会など会社資料をお渡しすることがあるので、伊藤金属総業を覚えていただけるインパクトのあるデザインを目指しました。蝶番の穴部分を透明にして、中の資料が見えるようにしているのですが、社員さんのご家族から”こんなふうに使ったら推し活にもオススメできるね”と、グッズの楽しみ方を提案していただいたんです。自社を知ってもらうために作ったアイテムが社員同士を繫げ、さらにご家族とも繋がって、すごく嬉しかったですね」(伊藤さん)

変化を恐れず続ける挑戦
『ちょうつがいしかつくらない と言った覚えは、ない。』
会社のこと、蝶番のことを知ってもらうきっかけはいくつあってもいいと、今後は社員の皆さんにもアイデアを出してもらい、グッズを増やしていく予定です。
「グッズ製作にあたり、”注目を浴びたい”という思いがあって、はっきりとしたポップな色合いのグッズを当初は考えていたんです。それを若い女性社員さん(Choutsu-Girl)に話したら、今はくすみカラーだよとアドバイスをもらって、こうしてかわいいグッズが出来上がりました」(とも子さん)
技術を繋いでいくだけではなく、変化を恐れずに新しいことに挑戦することで、社外の交流だけでなく社内の繋がりも深まっています。
「工場見学や組み立て体験、オリジナルグッズを通して、普段なかなか光の当たらない蝶番に注目してもらいたいです。そして、誰が作っているのか、その工場が伊豆にあることに気がついてもらえたら。蝶番は柱と扉を繋ぐだけじゃない!実際に工場の雰囲気を楽しみながら、蝶番でヒト、モノなどいろいろなモノが繋がることを実際に体験してもらえたら嬉しいです」(伊藤さん)
使い方次第で、人も縁も結んでしまう蝶番。
高いポテンシャルを秘めた蝶番が繋ぐ新たな出会いが楽しみですね。
スポット情報 – 有限会社 伊藤金属総業
所在地:静岡県伊豆市柏久保139
TEL:0558-72-0604
FAX:0558-72-1904
営業時間:平日8:00-17:00
定休日:日曜日、祝日、年末年始
※昼休みの時間(12:00-13:00)は、電話の対応ができません
有限会社 伊藤金属総業が発信するSNS一覧
2025年4月に取材しました
※記事内の価格について変動する可能性があります