気軽に本格的な吹きガラス体験!毎日使いたくなる器に出会える「兒島硝子」(沼津市)
2025.10.10
レジャー
日本一の富士山を眺めながら、休日を大きく楽しむ!
静岡県東部を中心とした新(深)情報サイト「ふじスマ+(プラス)」のライター、スマコです。
暑さも和らぎ、ようやく秋めいてきました。
食欲の秋、芸術の秋、スポーツの秋…みなさんは、秋といえば何をイメージしますか?
秋の味覚もアートも両方楽しみたい!そんな方にピッタリの秋におすすめのお出かけ先をご紹介します。

手ぶらでOK!「兒島硝子で吹きガラス体験」
首都圏からアクセスの良い沼津港は、干物を自分で焼いて味わったり、干物づくりにチャレンジしたりと、体験型観光が楽しめる注目の観光地。
そんな沼津港周辺に、食体験以外に本格的なものづくり体験ができるスポットがあるんです。

2024年7月のオープンから1周年を迎えた「兒島硝子」
沼津港から徒歩5分、沼津市千本東町に2024年7月にオープンした「兒島硝子(こじまがらす)」。
吹きガラスの工房と、作品を展示販売するギャラリーが併設されています。
吹きガラス体験は基本的に予約制ですが、器の購入については営業時間内であれば予約不要でいつでも可能です。
工房前、車止めブロックが設置されたスペースに2台分駐車可能です。

ガラス界の熱男を目指す!兒島佳祐さん
「兒島硝子」代表の兒島佳祐(けいすけ)さんは、吹きガラス職人。
神奈川県川崎市生まれ。「日本装飾美術学校」ガラス専攻を卒業後、ガラス工房勤務を経て独立。
2024年に工房を構えるために沼津市へと移住されました。
1,000度以上にもなる炉で熱を加え、柔らかくなったガラスに息を吹き込み、機械を使わずに器などを成形する「吹きガラス」。夏場、50度を超えてしまう工房内の温度。作り始めたら途中で止めることができない「吹きガラス」は、技術力の高さ、さらに集中力、判断力、体力など多くの要素が関連し合い、作品を作り上げます。「ガラス界の熱男目指してます」兒島さんが身につけていたTシャツも熱い!
「専門職に就きたいという思いはもともとあったのですが、高校卒業後は保育職に就くための進路を考えていました。そんな時に偶然、様々な分野の職人や名人が技術や知識を競い合い、チャンピオンを目指すテレビ番組の「ガラスアート王選手権」を観たんです。テーマに沿って作家が製作する様子を見て、ガラスの仕事ってかっこいいな、柔らかい素材は自由で、アート表現もできておもしろいと感動しました。将来、家庭を築いたら、自分の子どもをもつかもしれないけれど、ガラスは今しかできないと、進路を決めました」

”家にあったらいいな”という器を作りたい
工房とギャラリーを構える以前は、全国のクラフトフェアに出展することで新作のガラスを発表していた兒島さん。
「”ひと回り大きい方が使いやすい”とか、”料理を盛り付けるとせっかくの模様が見えなるの”など、ギャラリーを設けたことで、購入してくださったお客様の反応を直接受け取ることができるようになりました。使ってもらえることがこの仕事の醍醐味なので、暮らしの中で実際に使ってもらうことをイメージして製作することを大切にしています。例えば、350mlの缶ビールを楽しむグラスを作る場合、350mlピッタリ入るグラスじゃダメなんです。よりおいしい一杯を楽しんでもらえるように、泡まで美しく注げる容量に仕上げます」

代表作「フラワー」
ギャラリーを訪れたらぜひ注目してほしいのが、兒島さんの代表作「フラワー」。
ガラス職人となって初めてデザインし、完成まで数年かかったという特に思い入れのある作品です。
「フラワーに着手する際、イメージはありました。夢の中で自分が作っていた器を起きてから忘れないようにスケッチしたんです。夢に出てきた器は、黒と緑だったので、そのカラーで作り始めました。ガラス工房で働き始めて間もない20代前半のことで、コップもちゃんと作れない状態だったので、今考えるとそもそも難しいですよね。フラワーの試作を通じて、改めて基本の大切を痛感しましたね。ガラスの黒色には何種類かあるのですが、先輩と手持ちのガラスを物々交換して、自分が表現したいスタイルに合う黒色ガラスを見つけました。『またスイカちゃんを作るの?』と、そのカラーリングから先輩によく言われてました。現在は10色で展開しています。自分の技術の成長と共に育った作品です」

日々の生活で心地よく使ってもらえる器を。
ギャラリーと聞くと、作品を観賞するイメージがあるかもしれません。
しかし、兒島硝子のギャラリーでは、気になる器こそ手にとってほしいといいます。
グラス、照明、花器、ペーパーウェイトなど、スタイリッシュな見た目だけでなく、使い心地まで考慮した日常使いもできる兒島さんの作品。実際に器を手にすることで、触り心地や重さなどを確かめながら、自分にピッタリの器を見つけることができます。
兒島さんが作るグラスに底が厚めのものが多いのは、底に溜まったガラスの美しさを知ってほしいという思いから。その他にも光の反射の美しさなど、工場製品とは違った吹きガラスの魅力、素晴らしさを理解してもらえる器づくりをしています。
モールド(型)に吹き込んだ凹凸模様が特徴のモールドグラス、ファイヤーポリッシュという技法を用いて、切子硝子と吹きガラスそれぞれの魅力を融合させたカットグラス。
その他に、高い完成度が求められるうえ、難易度の高い脚つきグラスも並んでいます。
カップ、ステム(脚となる部分)、台の3つから成り立つ脚つきグラスは、均等に仕上げないとパッと見た時に違和感が出てしまいます。
すべて手作業で仕上げる吹きガラス。大きさを揃えたり、厚みを調整したりと、兒島さんが何度も練習を重ねて培った技術がそのまま形になります。
「炉で柔らかく溶かしたガラスを『吹き竿』にきれいに巻く。この作業工程は基本的なことですが、一番難しいんです。きれいに巻くことができると仕上がりが違います。基礎をしっかり身につけることができれば、ガラスに空気が入りにくくなったり、調整作業が必要ないので作業もスムーズになったりと、不必要な要素を削ぎ落すことができるので作業工程においても無駄がなくなります。直接触れることはできない、作り始めたら止まれない、温度は目に見えない。簡単じゃないからおもしろくて、一生考え続ける仕事です」

グラスの使い心地が試せるのもうれしい
グラスの飲み口の厚さを薄くすることで口当たりが良くなり、スッと口の中に飲み物が流れ込むことでより一層、味、香りを楽しむことができます。
お手入れや安全性に配慮しつつ、使用した時のフィット感を意識し、飲み口をできるだけ薄く仕上げている兒島さんのグラス。使う人の気持ちを知るために、自身が使ってみたり、友人に使ってもらい感想を聞いたりと、毎日使いたいという使用感を目指しています。
そんなこだわりを聞いたら、実際に試してみたくなりますよね。
兒島硝子では、対象のグラスの中から好きなものを選び、使い心地を体験できるサービスがあります。(有料)ギャラリーを訪れた方ならどなたでもドリンクを注文できるので、使い心地をぜひ試してみては。

ガラスでどう作るか、表現するか。
ギャラリーの展示作品を改めて見てみると、器以外にお寿司に海の生き物など、遊び心溢れるものも。
”深海魚の聖地”沼津市らしいメンダコの一輪挿しは、沼津土産にもピッタリですね。
目にしたものを、『これをガラスで作るならどう作ればいいか』と、つい製作工程を考えてしまうという兒島さん。そんな自身のことを『ガラス脳』と呼んでいます。
どうしたら本物に近づけられるか、楽しみながらガラスの表現方法を究めています。
ぜひギャラリー内を探してみてください。

手ぶらでOK!吹きガラス体験
兒島硝子では、作品の展示販売の他、吹きガラスの魅力を知ってもらいたいと「吹きガラス体験」を実施しています。
観光客だけでなく、GWなど長期休暇のタイミングには地元の方も多く体験されるそうです。
体験に要する時間は、約20分間。旅先であっても、手ぶらで出掛けても本格的な体験ができる手軽さも魅力です。
■グラス 4,000円
■鉢 4,000円
■ペーパーウェイト 3,800円
■フラワーベース 4,000円
■ スペシャルグラスコース 4,400円
※すべて税込み
まずは、上記の中から作りたいものを選びます。
事前予約は、ホームページまたは「じゃらん」から。
さらに現地で、兒島さんと相談しながら形や色を決めていきます。
兒島さんが丁寧に説明、サポートをしてくれるので、吹きガラス体験に初めてチャレンジする方も、お子さんのチャレンジも安心です。
■ 工房は暑いのでタオルを忘れずにお持ちください
■ 形や色決めをするので、開始時間の10分前にはお越しください
■ 体験されるお子さんの年齢は小学生以上(小学生以下でも保護者が補助する場合は体験可能です)
■ 20分で1枠、1名ずつ製作します(2名の場合は2枠予約してください)
■ 安全のため、サンダルはおすすめしません。運動靴でお越しください
■ 遅れる場合は、連絡をお願いします
■ 当日キャンセルの場合、100%キャンセル代をお支払いいただく場合があります

ものづくりが好きな人にピッタリの体験
形や色決めをしたら工房へ。
スマコは、丸くてコロンとした形のグラスを寒色MIXで作ります。
やけど防止のため、軍手やアームカバーを装着。
この時、肌が見えないよう、手首までしっかり覆うことが大切です。
まずは、道具の名前や使い方、完成までの作業工程の説明を受けます。
兒島さんが普段使っている道具を使用して体験できるのもうれしいポイント!
ストローのように中央部分が空洞になっている吹き竿に巻きつけられた水あめ状のガラス。
約1,000度の熱いガラスが近づくだけで、その熱気が伝わってきます。
ガラスが垂れないように吹き竿を回しながら、息の強さにも注意して息を吹き込んで形成していきます。しかし、ゆっくりしているとガラスが冷めてしまうので、作業は時間との闘いでもあります。
難しそうだけど大丈夫?
心配になるかもしれませんが、兒島さんがマンツーマンでサポートしてくれるのでご安心を。
■ジャック…ハサミのような形の道具。筋目を入れたり、口を広げたりする際に使用。
■紙リン…折り重ねた新聞紙を濡らし、高温で柔らかいガラスの形を整えるために使用。
■やすり…吹き竿とガラスを切り離す際に使用。
■木ごて…底面に濡らした木ごてを押し当てて、グラスの底部分を成形。

製作工程を一から体験できるところも兒島硝子の魅力
ものづくりに興味があり、楽しみな反面、不器用なスマコは不安な気持ちもありましたが、緊張を感じる間がないほど、楽しく最終工程まで進みました。
それも兒島さんがやさしく的確にサポートしてくれたおかげです。
ガラスの熱さ、ジュっと水分が蒸発する音、熱したガラスの柔らかさ。
体験したからこそ得られた感覚がたくさんあります。
「ガラスのきれいな透明感と、普段何気なく使っている物を作り上げていく工程について改めて知ってもらえたら。作業の軌道修正をするのも技術が要るので、体験中の経験が自分の器づくりに反映することも。僕自身もお客様との体験を通じて学ぶことがたくさんあります」

私だけの特別なグラスが完成!
ジャックで飲み口を広げて形を整えたら、丸いコロンとしたグラスになってきました。
切り離し、兒島さんに仕上げてもらった底部分は、おへそのような形に。
急に冷えると割れてしまうこともあるため、温度調整のできる炉でゆっくりと冷やします。
夕方に体験し、翌日午後以降には受け取り可能というから驚きです。
出来上がりを見た瞬間、思い描いていた通りのグラスが完成していたので、うれしくて自然と笑顔になりました。私だけの特別なグラスを使って今日は何を飲もうか。手にしてから毎日、小さな幸せを感じています。
実際に体験すると、兒島さんがいかにスピーディーに難易度の高い作業をされているか。
その大変さと兒島さんの技術力の高さを実感します。
楽しく体験できるだけでなく、間近で職人さんの技を見られる、とても贅沢な時間でした。
「ガラスと聞くと難しいかなと思いがちですが、他所より製作過程を一から体験できるので、満足感が味わえると思います。ぜひ遊びに来てください」
ご自身の工房を構えた後も、作品を届けるため、各地のイベントに出展されています。
イベント出展情報や新作の器のお知らせなど、最新情報はSNSをチェックしてください。
窯のメンテンナンスのため、2025年10月18日(土)~11月5日(水)まで、吹きガラス体験は休止です。
吹きガラス体験のご予約は、11月6日(木)以降にご予定おきください。
スポット情報 – 兒島硝子
所在地:静岡県沼津市千本東町3番地
営業時間:(月火金)12:00-17:00|(月火金以外)10:00-17:00
※吹きガラス体験の最終受付は16:30
定休日:水曜、第2、4木曜、年末年始
※Instagram、ブログで発信しているカレンダーでご確認ください
TEL:055-946-6066
駐車場:あり(2台)
Instagram:@kojimaglass
ブログ
兒島硝子ホームページ
◆吹きガラス体験予約ページ
2025年9月に取材しました。
※記事内の価格については変動する可能性があります