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沼津のまちを明るく照らしたい!青空の下の美術館「カベヌマ」(沼津市)

2025.8.3

アート&カルチャー

日本一の富士山を眺めながら、休日を大きく楽しむ!
静岡県東部を中心とした新(深)情報サイト「ふじスマ+(プラス)」のライター、スマコです。

ふじスマプラス連携エリア内で活躍するアーティストにスポットを当てる応援企画。
現在、沼津駅北口エリアで進行中のアートプロジェクトをご紹介します。

青空の下の美術館「カベヌマアートプロジェクト」

沼津駅の北側の中心地にあった商業施設「イシバシプラザ」。
2021年8月の閉館からもうすぐ4年、現在は更地となっています。
周辺には住宅や学校が多く、人通りが多い主要道路沿い。数百メートルの真っ白の防音壁が、更地を取り囲んでいる状態が続いていました。

「街灯がなくて暗いんです」

周辺住民の声を受け、沼津市議会議員の加藤明子さんが、アートの力でまちを歩いて楽しくなる仕掛けづくりをしたいと、「あおき屋株式会社」代表の青木一さんに相談したことから動き出したプロジェクト。

“真っ白な防音壁を活かして、まちを明るく照らしたい”

沼津に縁のある8組のアーティストがプロジェクトに賛同し、夏の暑さに負けず制作活動に奮闘しています。

2025年6月 カベヌマプロジェクトが本格始動!

2025年6月28日(土)からカベヌマプロジェクトが本格始動!
1ヶ月以上かけて、ミューラルアート(壁に描かれているアート全般を示す言葉)を制作します。
この日を迎えるために、アーティストとの調整、活動を支援してくれる企業や団体への呼びかけなど、実行委員会メンバーは1年以上前から準備をしていました。

代表:青木 一さん
副代表:加藤明子さん
広報担当:高橋和之さん

渡邊 純さん
マツナガマサエさん
斎藤遥加さん
鈴木翔太さん
草井裕子さん
ペトロアンドヨゼフ
 ≫深澤慎也さん
 ≫田川 誠さん
mokoさん
YUSUKE SUGISAWAさん

2025年6月28日 まちなか美術館が動き出す

道路使用許可を申請した朝5時から夜8時までの決められた時間内に、アーティストそれぞれが制作を進めます。本格的な夏を迎えた時期の外作業、白い壁がレフ板のように作用し、日中はとにかく暑さとの闘い。次第に、早朝、夕方以降をメインに作業するように。

誰かが作業してる間は、自転車や歩行者の妨げにならないように、そして事故防止のため、実行委員会メンバーが立ち会うように配慮しています。

「沼津をアートのまちにしたいという想いがずっとあって。イメージしているのは、青空の下の美術館です。沼津に縁のあるアーティストの皆さんに、テーマは沼津に特化しなくてもいいので、皆さんの好きなものを選んでいただいて、本気の絵をお願いしますとリクエストしました」(加藤さん)

自然と広がった支える手

参加アーティストのひとり、抽象画家草井裕子さん。
制作初日には、真っ白な壁を真っ黒に塗りつぶすところからスタート。
点描画の制作を進めていくうちに、プロジェクトを知った市民の方たちが制作のお手伝いをしてくれるように。

「20年近く画家をしています。仕事でもなんでも、ずっと同じことに取組んでいても、型にはまらずもっと自由であっていいと思うんです」(草井さん)

“自由”をテーマにした草井さんの作品を、有志の方や通りがかりの人たちが点描を描くお手伝い。よく見ると、大きさや間隔、形など、点描も人によって個性が出ます。この個性が集まることで美しくなるので、自由でいいのだといいます。

アーティスト自身も自分の壁を超えるカベヌマ

焼き菓子が大好きなイラストレーターのmokoさんは、おいしく描くことができると自信のある焼き菓子をちりばめた作品「#焼き菓子沼」を制作。

普段、コピックを使った作品づくりが多く、ペンキを使うのも壁画制作も初めての挑戦です。

「ペンキを使うこと、外で作業するすること、初めてのことばかりで常に悩みながら進めています。カベヌマを通じて、自分が見られながら描くことに緊張するタイプなのがわかりました。さっきも、下校中の高校生から『カヌレ、えっぐ!(えぐい)』と、声が聞こえてきて(笑)担当するスペースが埋まったら終わりだと思ったけど、楽しくなってきてしまったので終わりたくないですね」(mokoさん)

”やっぱりこの焼き菓子がいいな”と、一度描き上げたものを白く塗りつぶして違う焼き菓子を描き直したmokoさんの焼き菓子愛が深すぎます!

「マドレーヌを描いている時に、食べたくなってしまって、みんなで近くの安本さんに買いに行ったこともあるんですよ」(mokoさん)

mokoさんのエピソードのように、カベヌマTシャツを製作したり、連絡用にカベヌマオリジナルLINEスタンプをつくったりと、参加しているアーティストの皆さんは、遊びが上手なのだと副代表の加藤さんがお話してくれました。

「はずむように、越えてゆく」
フォトスポットのように作品を楽しんで

画家の斎藤遥加さんの作品「はずむように、越えてゆく」。
普段、1人で制作するため、制作中に常に周りに人が居る状況がとても新鮮だったといいます。

初めて扱うペンキという画材、理想の紫色が出せず、序盤はかなり大変だったと斎藤さんは振り返ります。

「約1ヶ月という制作期間でしたが、制作に集中できるよう万全な環境を整えてくださったカベヌマ実行委員会の皆さんや家族のおかげで、早朝や夕方の日の入りまで制作に集中することができました。地域の方に、絵の下地のローラー作業を手伝っていただいたり、何度も足を運んでくださる地域の方に、温かいお声がけをいただいたりして、暑さで体力が削られていくなか、本当に制作の支えになりました。こうしたやりとりのなかで、ああきっと大丈夫、わたしたちは手を取り合って生きていけると、心から感じられたのが1番嬉しいです!」

高く聳(そび)え立って見える壁も、少し高い階段だと思って、スキップするように越えてゆこう
という、メッセージを込めています。

沼津の市の花である「ハマユウ」の花びらから弾むような形の着想を得ました。
まちの人の心に心地よい風が抜けていくことを目指して、のびのびとした筆致で描きました。

奥行きのある構図もポイントなので、ぜひフォトスポットのように写真を撮って楽しんでいただければと思います。

完成までの過程も楽しむ

真っ白だった壁が、日を追うごとにカラフルに彩られていきます。
プロのアーティストの手によって、毎日変化していく壁画を間近で楽しめるのもストリートだからこその魅力。

「描いてくれてありがとう!」と、年配の方が声をかけてくれたり、差し入れをいただいたりと、アートを通じて地域との交流が生まれています。

「別の場所で仕上げていただいた作品を取り付けることもできるのですが、敢えてそうしなかった理由があります。沼津には実力のあるアーティストさんがいることを知ってもらいたかったし、じつはアーティストさん同士の接点がないことを聞いて。実際に一緒に作業をしていくうちに、ペンキを初めて使うアーティストさんが経験者にアドバイスをもらうなど、点が線になるように繋がりが生まれていると感じています」(加藤さん)

2日間に渡り開催されたアートワークショップ

3つの作品を対象に、7月20日(日)、21日(祝月)に開催されたアートワークショップに、スマコも参加しました。

1つ目は、草井さんの抽象画アートワークショップ。
2つ目に、イラストレーター・キャラクターデザイナーの渡邊純さんが下絵を描き、参加者が色塗りをするワークショップ。

深海魚、温州みかん、市の花「ハマユウ」など、沼津らしいモチーフが大集合した「沼津大好き」がテーマの作品。ポリゴン風に表現するため、定規を使って下絵を描いた渡邊さん。

「5人くらい来てくれたらいいなと思っていたら、ありがたいことに大勢の人が参加してくれて正直ビックリしています。作品のテーマは自由なんですけど、ひとつくらい沼津らしい作品があってもいいなと思って。海越しの富士山、お茶の実、伊豆三津シーパラダイスで飼育されていた伝説のカマイルカ”シリウス”などを詰め込みました」(渡邊さん)

作品中のネジが気になったスマコ。穴あけ加工や金属研磨業など、沼津は技術の高い町工場が多いとのこと。作品を通じて、沼津の新たな魅力を知ることができました。

アートワークショップには、周辺の学校に通う子どもたちが参加。
絵を描くことが大好き!という子が参加してくれたこともあり、夕方とはいえ暑いなか集中して色塗りをがんばる姿が印象的でした。

プロのアーティストの作品に触れる貴重な機会

3つ目は、文房具を使ったアートワークショップ。
マツナガマサエさんの作品「祝福」の下絵に、マスキングテープを貼り付けていきます。

手でちぎることもできるマスキングテープ。
保護者にサポートをしてもらって、未就園児もペタペタ。幅広い年齢の子どもたちが、思い思いに楽しむ姿が見られました。

最初は遠慮がちだった子どもたちも、次第に自分なりのイメージをもとに、こうしてみよう、こうしたらいいんじゃない?と、工夫しながら作業を進めていました。

ワークショップ以降、また壁画を観にいきたいと、足を運んだ参加者も。
自分が関わった作品が、まちの景色の一部になっていることに、きっとワクワクした気持ち、誇らしい気持ちを感じていることでしょう。

今後、工事壁が撤去される時が来ても、大人になっても、カベヌマワークショップの思い出は、子どもたちにとって沼津のまちの記憶に刻まれていくことでしょう。

完成は8月中旬予定。青空の下の美術館を楽しんで

最後に、副代表の加藤さんにメッセージをいただきました。
「日々、変化していく絵を歩いて見てほしいと思います。沼津に素晴らしいアーティストがこんなにいるのだと、ぜひ完成する過程を見てください。車で通りながら、歩いて、青空の下の美術館を楽しんでください」

色鮮やかでエネルギーの詰まった作品に、道行く人も振り返ります。
完成前ですが、まちなかを彩るミューラルアートによって、沼津駅北エリアがグッと明るくなりました。カベヌマアートプロジェクトで誕生した作品は、何らかの施設ができるまでは現在の場所で楽しむことができます。

すべての作品が完成したら、テーマやアーティスト名など、作品を紹介するカベヌマインフォメーションを設置するとのこと。


「カベヌマの活動が沼津に留まらず、いろんな場所に広がるといいです」インタビューに答えてくれた斎藤遥加さんのひと言に心が躍りました。

工事壁があるところなら、どこでもアートの力でまちなかを照らすことができますね。
カベヌマアートプロジェクトが与える影響やまちの変化など、もたらす作用を考えるとワクワクが止まらないスマコなのでした。



取材先情報 – カベヌマアートプロジェクト

所在地:静岡県沼津市高島町(イシバシプラザ跡)
カベヌマホームページ
Instagram:@kabenuma
LINEスタンプ

2025年7月に取材しました

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